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いつかは書こうと思いつつ、もう1年経ちました。
今回は、FOSTEX TM2の長期実機レビューを紹介していきたいと思います。

度肝を抜いた、2019年のThe NAMM Show 2019発表
まず、かんたんな今までまでの経緯をまとめてみましょう。
2019年1月24日、日本では決してメジャーではない、アメリカのThe NAMM Show 2019で、FOSTEXが発表したのが、このTM2です。
モノそのものは単なるTWSですが、決定的に違うところは、当時最新鋭だったQualcommのQCC3026というBluetoothチップを搭載し、TWS Plusに対応したことと、イヤホンにおける規格の一つであるMMCXに対応したということでした。

そこまでに、TRN BT20というMMCXに対応したTWSアダプタは存在していましたが、これはRealtekのチップを搭載していたので、SBCまでの対応とされています。こちらは後にBT20SというQCC3020搭載モデルが発売され、さらにFiioがBT20Sに独自ファームを入れたUTWS1という商品まで発売しています。

以降、どこかのメーカーが続くと思いきや、ShureのAONIC 215はリコール対象となり、iBassoのCF01が世に出ていないということで、実はTM2は現時点でもQCC3026を唯一搭載したMMCXアダプタとして、ハイエンドに属するモデルということになります。

さて、そこから半年、5月末に発売となります。
当初より約2ヶ月ほど遅れましたが、そもそもこの頃には、QCC3026搭載モデルのTWSは先発品らしく接続性の問題などや、各メーカーのコスト面で、QCC3020搭載のTWSが続々と発売されていました。
そんな中、発売されたファーストロットは即完売。以降、数ヶ月の品切れを起こしたまま、セカンドロットあたりからファームアップされたバージョンが出荷され、既存ユーザーには「Fostex TM Sound Support」によるアップデートで対応。しかし、それ以降は特にトピックもなく、当初の接続不具合などかがだいぶ安定したことにより、ある種、刺さっている人だけが使い続けているという感じです。

ちなみに発売1ヶ月後にSONYのWF-1000XM3が発表され、現在ではANC搭載のTWSの定番となり、セカンドロットが出回っていた11月にはAppleがAir Pod Proを発売。各社とも現在はQCC5100シリーズによるANCや、TWSの複数ドライバー化、ハイブリッドドライバー化などを経て、今後もこっちは伸びて行きそうな分野ではあります。

一方で、MMCXアダプタにはANCなどが必要ないことや、ネックバンドタイプに別のDACを搭載し、長時間再生を可能としたケーブル形が主流となっており、そちらには上位コーデックであるaptX HD搭載やLDAC搭載などといったモデルも出てきています。
現時点でAONIC 215(RMCE-TW1)の再発売後にまた新勢力が出てくる可能性がありますが、そもそもTWSタイプのMMCXアダプタというニッチな市場で、今後似たような商品が出ることは望み薄なのかもしれません。

TM2のここが良かった点
簡単には、以下の点です。
  • MMCXである点
  • ショートケーブルをリケーブルすることで、2pinやFitearなどにも対応する点
  • バッテリーの持ちがすこぶる良い点
まず、ショートケーブルをモジュール化したことにより、ほぼ何らかの形でリケーブル出来るイヤホンには対応できているという点は大きいです。有線ベースで使っているイヤホンをそのままTWS化出来る、ソケット問わずほぼ出来るというのは、現在でも大きなメリットであります。

さらに、ショートケーブルをリケーブル出来る=予算さえあればケーブルをイヤホン分買えば、イヤホン側のコネクタの抜き差しを減らすこともできます。現在では、WAGNUS.などの受注注文のオーディオケーブルメーカーや、個人作成によるオークション出品などで、リケーブルも購入することができます。(写真のケーブルはWAGNUSのTM2 Meridian、現在ケーブルの供給終了により入手不可)

さらに、外観はそれほどでもないですが、このサイズのおかげで大容量バッテリーを搭載しているため、連続して7~8時間程度はまず問題なく利用可能です。(コーデックはaptX)

TM2のここがダメな点
改善の余地というか、出た当時からなんとかなっただろうにというのが以下の点。
  • ケースがデカく、充電クレードルの役割しかない点
  • イヤホンによりホワイトノイズがひどくなる点
  • ちょっとした磁力により、本体のON/OFFがされてしまう点
  • 当初予定されていた、アプリによるエコライザが実装されない点
まず、世の中の人が絶対に思うであろう、ケースの問題。
イヤホン側のサイズの問題もあるので、そういう点でこのサイズのケースが必要なのは分かるのですが、これが充電クレードルとしての役割しかないというのは、やっぱり問題だと思います。シートタイプのモバイルバッテリーなどでごまかしていますが、メーカーがオプションで、バッテリ内蔵タイプのケース、あるいはもっと簡易なクレードルを用意してくれると、使い勝手がいいんですけどね。
また、取り出しやすさを優先したのか、レシーバーの収まりがあまり良くなく、ちゃんと充電されていないということもしばしばあります。

イヤホンによってホワイトノイズが大きくなるという点。UE900sで確かにそんな感じだったのですが、基本的に使っているN5005では、(リケーブル化も含め)ほぼ問題ないと思います。これはイヤホン側のスペックに依るので、合わないならしょうがないかなとも思います。

磁石によるON/OFF。これは磁力によりON/OFFスイッチが入るという仕組みで、クレードルにはめ込んだら自動的に電源OFFするためのものです。ただ、これにより本体ボタンでの電源OFFをしたあと、イヤホンケースに入れ、持ち運びしていると、勝手に電源がONになっていたり、ペアリングされたままになっていたりします。さらに、ケース内で、ボタンが意図しない操作をしてしまうと、勝手に音楽再生されるようなこともあります。この仕組みって、TWSだと充電接点に触れたらOFFという感じになりますけど、別に磁石などを使うことなくできているんですよね。

最後に、かなり遅れて完成したFostex TM Sound Supportにて、エコライザがいつまで経っても提供されない点。当初はどこまで想定していたんでしょうか。まあ、これのために会社のリソースを割くわけにもいかないし、外注するにしても、イヤホンに依存するレシーバーのためにエコライザがそもそもいらないと判断された可能性もあります。TM2に後継モデルでも出れば別なんでしょうけど、おそらくこれはこのままでしょうね。


特に文句はない点
Bluetooth接続の安定性は並。これは難しいところで、例えばスマホとDAPではBluetooth強度なども変わるため、それにより安定性が大きく違うところはあります。鞄の中のHiby R6では、秋葉原で致命的なほど途切れますが、XPERIA XZ2 Compactでは割と途切れる程度です。参考までに、WH-1000XM3ではLDAC接続の660kbpsで、同じ秋葉原の場合、Hiby R6では割と途切れる。XPERIA XZ2 Compactでも同じぐらい途切れるという感じです。なので、物理的にアンテナサイズが小さいものの、それ相応には接続できている感じです。
使わないときでも、10日に1回ぐらい充電しないと、バッテリーがないということが多いです。なんか最近買った武蔵野レーベルのCP-BTR-01もそうなんだけど、たまに充電してあげないと使えなくなるという周期が、非常に短いのが気になります。TRN BT20や、WI-1000Xなどは、60日に1回ぐらい充電すれば、あるいはしなくても、普通に電源ONが出来るのですが、これをバッテリーの消耗で片付けていいものか微妙なところです。
ちなみに、BT20シリーズは、本体にmicroUSBがついているため、クレードルなどを必要とせず、付属の二股充電ケーブルで充電出来るため、わかりやすくて便利です。


総評
さらなる作り込みをお願いしたいけど、多分単発で終わるだろう迷機

なまじながらに1年売らずに済んでいるのは、なにより不満はあれど、そのギミックと音楽を聞く環境として、非常に安定したモデルであることが下支えとなっています。
ただ、正直なところ、FiioのUTWS1の使い勝手もかなりいいとの評判で、あちらTRNの初代BT20から3回のブラッシュアップがされています。ゆえにかなりいいモデルであるのは間違いないと思います。
値段差、アプリなど含め、これから買うのであれば、UTWS1(もしくはBT20S)でいいと思います。

いい点にメリットを感じるかどうかもそうですけど、これを検討する人は、単純に沼に浸かってる人だと思いますので、付け直したイヤホンの細かい違いなんかや、リケーブルによる効果も十分楽しめる要素として捉えられるかもしれません。価値であり、真価はそこにあるのだと思います。

1年も使っていると、ケースやギミックで悪目立ちが多く、アダプターとしての良さを打ち消すレベルでがっかりすることも多いです。使いたい時にそうなるから、より印象が悪いです。代わりを買おうと思えないから、現状維持で使っている感じです。まあ、それに耐えきれなくなって、CP-BTR-01買って、似たような問題があるから、残念ながら消極的にそうなるかな。

まあ、やっぱりメーカーに頑張ってもらって、ケースの改善と、さらなるリケーブルの種類、それとアプリやファームウェアのアップデートをお願いしたいところです。もしくは同じ規格での上位後継モデルを望みたいところです。高級イヤホンでも耐えうるLDACやaptX HDの実装などもできれば面白そうですけどね。





おしまい